本記事では、コードの転回形について解説していきたいと思います。
いままでは、いわゆる「基本形」となり、ダイアトニックコードぼ場合は3度、3度の音程で積み上げたコードについて解説してきました。
実は、そのコードは、「転回」という技法を用いることで、コード進行のパターンを一気に何十倍にも増やすことができます。
そこで本記事では、転回形についてその構成の仕方や、響きの特徴、使用することで得られる効果、既存曲から見つけて分析する方法について解説していきたいと思います。
なお、本記事の内容について理解するには、あらかじめ三和音の構成、四和音の構成(前編) 、四和音の構成(後編)及びダイアトニックコードについての前知識が必要となりますので、不安な方はリンクをクリックしてご覧ください。
目次
コードの転回系の構築方法
コードの転回の仕方は極めて簡単で、そのコードの並び順を変えるだけです。
3和音の場合、転回形は2種類あります。
転回していない形(基本形)の、ルートの音を1オクターブ上げたもの(もともとの真ん中の音が新しくルートになる)を第1転回系、第1転回系のルートを1オクターブ上げたもの(基本形の一番上の音が新しくルートになる)を第2転回形といいます。
上記がCメジャートライアドの基本形、第1転回形、第2転回形となります。
4和音の場合、転回形は3種類あります。
転回していない形(基本形)の、ルートの音を1オクターブ上げたもの(もともとの真ん中の音が新しくルートになる)を第1転回系、第1転回系のルートを1オクターブ上げたもの(基本形の上から2番目の音が新しくルートになる)を第2転回形,第2転回系のルートを1オクターブ上げたもの(基本形の一番上の音が新しくルートになる)を第3転回形といいます。
上記がC7の基本形、第1転回形、第2転回形,第3転回形となります。
コードの表記方法ですが、基本形のコードネームにスラッシュ「/」を付けて、新しいルートを記載するものが一般的です。
コードの転回系を用いる3つのメリットは?
コードの転回形を活用することで、以下の3つのメリットが得られます。
メリット1 コード進行のパターンが豊かになる
コードには構成ルールが17パターン、ルートが12種類なので、合計204種類のコードが存在しますが、転回系の概念も合わせるとその種類は一気に744種類になります。
複数のコードからなるコード進行で行くと、そのパターンは数十倍、数百倍にも膨れ上がり、コード進行のパターンが豊かになり、脱マンネリ化に大きく貢献できます。
メリット2 2通りのコードの雰囲気を出せる
転回系の響きの特徴として、2種類のコード感を感じられるというものがあります。
たとえば、Cメジャーの第1転回形でもあるC/Eの場合、通常のCメジャーの雰囲気に加えて、新しくルートになったEをルートとするダイアトニックコードのEmの雰囲気も同時に感じられ、リスナーに絶妙なイメージを与えることができます。
メリット3 響きを大人っぽくできる
コード進行の中で、ルートがぴょんぴょん動くと場合によっては幼稚な響きに聞こえてしまうことがあります。そういった場合、転回形を用いることでコードトーンの動きの幅を小さくすると、響きがスムーズで大人っぽくなることがあります。
コードの転回系を用いた2つの進行例
それでは、転回系を用いたコード進行の例を、用いていない例と比べてお聴きください。
まずは展開していないパターンです。
王道中の王道であるカノン進行です。
楽譜にすると上記のようになります。
これを以下のように転回してみましょう。
カノン進行の転回パターンとしてよく使われます。
よりスマートな響きを感じられたかと思います。
実はこの場合のルートモーションはほぼ階段状になっていることがお分かりいただけるかと思います。このように階段状の音を含む点が、カノン進行の響きを心地よくしてくれている理由の1つとなっています。
次に号令進行の転回系を考えてみます。
上記の音声及び楽譜が展開していないパターンです。
では、以下のように展開させてみます。
クラシックなどでもこの転回が良く用いられます。転回形を用いていないものよりも知的な響きを感じられたと思います。
是非とも転回あり、無を何度も聴き比べていただければと思います。
転回形のコードを分析する方法は?
ダイアトニックコードと同じく、転回形においても、既存曲から見つけてきてどのように使われているか分析することでより習熟度が高まります。
その際、楽曲のキーによって分析が変わってしまってはその習得効率が落ちますので、ダイアトニックコードの時と同様、全キー共通での分析をしていきます。
具体的には、以下のように記述します。
- 第1転回形 基本形のローマ数字による表記に「/3」を付ける
- 第2転回形 基本形のローマ数字による表記に「/5」を付ける
- 第3転回形 基本形のローマ数字による表記に「/7」を付ける
ただし、以下の場合は数字の3,5,7に♭や#を付けます。
- 第1転回系でルートの音が基本形のルートより短3度の音程の場合:「/♭3」
- 第2転回系でルートの音が基本形のルートより増5度の音程の場合「/#5」
- 第3転回系でルートの音が基本形のルートより短7度の場合「/♭7」
上述したカノン進行の転回形を分析する場合は上記のようになります。
まとめ
本記事では、コードの転回形について解説してきました。
- コードの音の順番を変える転回形は、比較的簡単にコード進行に色どりを与えられる技法の1つである
- 転回形を用いることでコード進行パターンは何十倍にも膨れ上がり、選択肢が豊かになる
- 転回系はコードに2つの雰囲気を感じさせてくれる
- 転回系を用いてルートやコードトーンの動きを小さくするとスマートで大人びた響きになる
是非とも当ページの内容を理解していただき、積極的にオリジナル曲に転回形を用いてみてください。