本記事では、ノンダイアトニックコードの3つめの技法として「モーダルインターチェンジコード」について解説していきます。
モーダルインターチェンジコードは、コード理論を順番に学んでいて、最初に躓くことが多いポイントです。私もそうでした。
その理由は、数が多く使い方の幅も広いためですが、ほとんどの講師の方は一度に伝えようとするため、受講者の理解が追いつきにくいということもあるかと思います。
そこで、本記事では、モーダルインターチェンジについての説明および、最も多く取り入れられていてかつ理解がしやすい「同主調マイナーキーからの借用和音」の技法に絞ってその使用方法や一覧を示していきたいと思います。
なお、本記事の内容を理解するためには、メジャースケールのダイアトニックコード、ナチュラルマイナースケールのダイアトニックコード、チャーチモードのスケールについての前知識が必要となりますので、不安な方はリンクをクリックしてご覧ください。
目次
モーダルインターチェンジコードとは?
モーダルインターチェンジコードは、ノンダイアトニックコードの1つです。
楽曲の多くはメジャースケール、あるいはマイナースケールに基づいて作られており、、時々チャーチモードのスケールに基づいた楽曲も存在します。
そのなかで、現在楽曲のベースとして使われているスケールとは別のスケールのコードを借用してきて使用するコードが、「モーダルインターチェンジコード」ということになります。
その中でも最も幅広く利用されていてかつ理解も容易なものが、「メジャーキーの楽曲において、同主調のナチュラルマイナースケールのダイアトニックコードを借用する」という技法になりますので、本記事ではその方法について説明していきたいと思います。
モーダルインターチェンジ(同主調のマイナーキーからの借用和音)の把握方法一覧
モーダルインターチェンジコード(同主張マイナーキーからの借用和音)の把握方法ですが、まず現在のキーの同主張を把握しましょう。
同主調とは、同じ主音で短調か長調かが異なるものです。
たとえば、Cメジャーキーの同主調はCマイナーキー,Fメジャーキーの同主張はFマイナーキー、D♭メジャーキーの同主調はD♭マイナーキー、すなわちC#マイナーキー、G♭メジャーキーの同種調はG♭マイナーキー、つまりはF#マイナーキー、となります。
同主調のマイナーキーが把握出来たら、そのマイナーキーのナチュラルマイナースケールのダイアトニックコードを把握します。
それが、そのキーで使えるモーダルインターチェンジコードです。
上記がCメジャーキー、3和音のモーダルインターチェンジコードとなります。
上記がCメジャーキー、4和音のモーダルインターチェンジコードとなります。
画像にあるように、分析するとナチュラルマイナースケールのダイアトニックコードと同じで、
- 3和音:Ⅰm、Ⅱdim、♭Ⅲ、Ⅳm、Ⅴm、♭Ⅵ、♭Ⅶ
- 4和音:Ⅰm7、Ⅱm7(♭5)、♭ⅢM7、Ⅳm7、Ⅴm7、♭ⅥM7、♭Ⅶ7
となります。
これで同主調のマイナーキーからの借用和音が把握できました。
上記が、12キーのモーダルインターチェンジコード(同主張マイナーキーからの借用和音)の3和音のもの一覧です。
上記が、12キーのモーダルインターチェンジコード(同主張マイナーキーからの借用和音)の4和音のもの一覧です。
使い方としては、最もシンプルなものはダイアトニックコードの進行を作り、その中から1つもしくは複数を選んで、ローマ数字が同じモーダルインターチェンジコードに置き換える、というやり方ですので、次の段落で説明しつつ進行例も示していきます。
モーダルインターチェンジ(同主調のマイナーキーからの借用和音)の使い方及び進行例
それでは、モーダルインターチェンジ(同主調のマイナーキーからの借用和音)の使い方を、進行例を交えて説明します。
ダイアトニックコードの進行を決める。
まずはもととなるダイアトニックコードの進行を決めましょう。
- Ⅰ-Ⅳ-Ⅴ-Ⅰ(C-F-G-C)
- Ⅰ-Ⅵm-Ⅳ-Ⅴ(C-Am-F-G)
- ⅣM7-Ⅴ7-Ⅲm7-Ⅵm7
上記の3つのダイアトニックコードの進行をもとにします。
置き換えるコードの進行を決める。
どのコードをモーダルインターチェンジに置きかえるか決めます。
以下では太字で示した部分を、分析で同じローマ数字になるモーダルインターチェンジに置き換えています。
- Ⅰ-Ⅳ-Ⅴ-Ⅰ(C-F-G-C)→Ⅰ-Ⅳm-Ⅴ-Ⅰ(C-Fm-G-C)
- Ⅰ-Ⅵm–Ⅳ-Ⅴ(C-Am-F-G)→Ⅰ-♭Ⅵ–Ⅳm-Ⅴ(C-A♭–Fm-G)
- ⅣM7-Ⅴ7-Ⅲm7–Ⅵm7(FM7-G-Em7–Am7)→ⅣM7-Ⅴ7-♭ⅢM7–♭ⅥM7(FM7-G7-♭EM7–♭AM7)
モーダルインターチェンジコード使用例
そしてできたコードが以下のような音になります。
- Ⅰ-Ⅳm-Ⅴ-Ⅰ(C-Fm-G-C)
- Ⅰ-♭Ⅵ–Ⅳm-Ⅴ(C-A♭-Fm-G)
- ⅣM7-Ⅴ7-♭ⅢM7–♭ⅥM7(FM7-G7-E♭M7–A♭M7)
ダイアトニックコードのみの場合と、モーダルインターチェンジを入れた場合、後者の方がお洒落でシックな感じを味わっていただけたのではないでしょうか。
まとめ
本記事では、モーダルインターチェンジコードとして最も幅広く用いられる同主調のマイナーキーからの借用和音の把握方法、一覧や使用方法や進行例などを示してきました。
モーダルインターチェンジコードを有効に活用することで、コード進行のパターンが増えるだけでなく、よりリスナーの心をつかむ、俗にいう「エモい」楽曲が作れるようになりますので、ぜひ本記事の内容を理解していただければと思います。
次記事以降、さらに高いコードの技法を続けて解説していくのもアリですが、やはり読者の皆様には最短で「1曲作れる」ようになって頂きたいと思っております。
そこで「スタンダードコース」でお届けする「コードに関する技法」は本記事をもって最後とします。ここまでで多くの楽曲のかなりの部分のコードをカバーできますし、コードに知識でいうと十分に1曲作り上げることが可能です。
次の記事から数記事にわたり、コードを具体的に楽曲に活用する方法や、メロディの作り方、楽曲編成などについて解説し、今までの内容と合わせて「1曲を完成させることができる」スキルを目指して、スタンダードコースを修了していきたいと思います。