音楽を聴いて楽しむことを専門としているリスナーの人たちは、作曲家や楽器演奏者のように音楽に関する深い知識は持ち合わせていないことがほとんどです。
一方、深い知識はなくとも、音楽リスナーの耳は、とある響きを聴いたときに、自然と次の展開を「こうなるだろう」予測したり、「こうなってほしい」と期待するという特徴があります。
こうしたリスナーの予想や期待を理解することで、より感動的な音楽を作ることができるようになります。
本記事では、リスナーが予測し期待する展開として、代表的なもの2つ、「トライトーンの解決」及び強進行について解説し、リスナーの心を揺さぶり動かす感動的な楽曲を作成する方法を説明していきたいと思います。
リスナーの予測&期待No.1!トライトーンの解決
以前音程の記事にて、増4度(Augment4th)および減5度(Diminish5th)の音程のことを「トライトーン」と呼び、不安定な響きであることをお伝えしました。
トライトーンはその不安定さから「悪魔の音程」とも言われ、これを聴いたリスナーは、その不安定さの解決を予測し、強く求める傾向があります。
不安定なトライトーンが安定した響きに解決することを、英語で解決を意味する「レゾリューション」とも言います。
具体的には、増4度(Augment4th)および減5度(Diminish5th)の次は、上下が半音ずつ狭くなった長3度、もしくは上下が半音ずつ広がった短6度、のうち、上下のうち片方が全音、片方が全音広がった長6度、上下のうち片方が全音、片方が半音狭まった短3度のなかから、基本的にはその時のキーに合ったほうへの動きが、トライトーンのレゾリューションとなります。(前者2つがメジャー系のレゾリューション。後者2つがマイナー系のレゾリューションです)
上記がトライトーンのレゾリューションの例です。
響きは上記のような感じです、最初不安定で窮屈な感じがした後、安心感が得られたかと思います。
長短3度、長短6度のうち、調号に合ったものに進みます。
赤がメジャー系、青がマイナー系のレゾリューションです。
トライトーンのレゾリューションは、上の音がが1オクターブ下がったり下の音が1オクターブ上がったりして上下が逆転してもOKです。上記は上の音が1オクターブ下がった例です。
「トライトーンは不安定」といわれると、ネガティブな意味に感じ、「ならばトライトーンは使わないほうが良いのでは?」と思われるかもしれません。
そこで人気ドラマ3年B 組金八先生にたとえてみましょう。
このドラマでは、生徒が大きな問題を起こし、それを金八先生が手腕を発揮して解決し、生徒と先生の間に絆が生まれていくストーリーとなっています。
生徒が問題を起こすシーンで、視聴者はハラハラし不安になります。そこが音楽でいう「トライトーン」が鳴っている状況です。
そして、金八先生が見事に解決すると、視聴者は安心感を得られ、大きな感動を得られます。それが音楽でいうレゾリューションになります。
金八先生の生徒が最初から全員いい子ちゃんで何の問題も起きない学級のドラマだったら面白くないと思います。
音楽も同じで、不安定で窮屈なものが安定して安心感を得られるとき、リスナーの感情が揺れ動き、感動的な音楽となります。
リスナーの予測&期待No.2!強進行
トライトーンの解決ほどではありませんが、もう1つリスナーが予測し期待する動きに「強進行」というものがあります。
強進行とは、ルートが完全4度上か、完全5度下へと動きコード進行のことです。
たとえば、C→Fや、Em7→Am7など。
とあるコードを聴いたとき、リスナーはルートが完全4度上か、完全5度下へ移動したコードを次の展開として予測し、期待する傾向があります。
上記が強進行C→Fの動きです。
1つ目の音を聞いたときになんとなく予測した通りの音が2番目に鳴ったのではないでしょうか。
音楽に感動を与えるには?(まとめ)
リスナーが予想し求める動きとして、トライトーンの解決や強進行について説明してきました。
上記で解説した動きは、いわば「予想通り」の動きとなります。
楽曲を通して予想通りの展開が続くとリスナーは飽きてしまうので、その予想や期待を裏切る技術も必要になってきます。
一方で、裏切りすぎてもリスナーは疲れてしまいます。
期待に対して適度に裏切り、適度に答えるということが大事です。
曲の好みは人それぞれなので、裏切りが多いものを好む人もいれば、裏切りの少ない素直な曲を好む人もいます。
楽曲のターゲットを考えて、「期待通り」と「裏切り」を絶妙に組み合わせることで、リスナーの感情を揺り動かし、感動的な楽曲が作れるようになります。
当サイトでは、今後期待通りの動き、裏切る動きなど様々な解説をしていきますので楽しみにしていてください。